釈迦如来五印相 | (1)施無畏印 (2)与願印 (3)法界定印 (4)説法印 (5)降魔印 | ||||
(1) 施無畏印 | 1) 右手を上げ指を伸ばし掌を見せる。漢字の示す意味通り「恐れなくてよい」 と相手を励ます。 2) 仏伝によると、釈尊が王舍城にいた時、政敵が釈尊を抹殺しようと企み、 酒に酔わせた象を放ち、釈尊を踏みつけようとしたが、釈尊が右手を挙 げて五本指を広げると、象は即、鎮められた。この手印が施無畏印。 |
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(2) 与願印 | 1) 左手の掌を見せ下に垂らす (中指を折り出す) 。 2) 坐像では手の平を上に向ける場合もあるが、その場合も指先側を下げる ように傾けて相手に手の平が見えるようにする。 3) 相手に何かを与える仕草を模したもの。 4) その形式は浄土思想との関連から、阿彌陀の印相となり南北朝時代には、 常に「施無畏印」と併用されていた。 |
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(3) 法界定印・ (禅定印) |
1) 腹前で両手の掌を上に向け左手を下に右手を重ね親指を触れ合わす。他の指 は伸ばす。瞑想(禅定)するときの印で、禅定印とも呼ばれる。 2) 法界とは、すべての世界を意味しており、定印とは、世界は常につながって いることを体感する印。 3) 釈迦は坐禅を通じて、自分とあらゆる命は、円のように、常につながって いることを感得する。 |
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(4) 説法印・ (転法輪印) |
1) 両手を胸まで上げ、掌を前に向けて親 指と人差し指を合わせて輪を作る。 2) 親指とどの指を合わせるか、左手を内側に、右手を外側に向けるか、両手 とも外側に向けるかなどさまざまなバリエーションがある。 3) 手振りで相手に何かを説明している仕草を模したもので 釈迦が鹿野苑に 於いて初めて仏教の教義を人びとに説いた 初転法輪を表現している。 2) 作例:極楽寺釈迦如来像、戒壇院盧舎那仏坐像、孝恩寺弥勒菩薩坐など。 類例は少ない。 |
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(5) 降魔印・ (触地印) |
1) 片手を下ろして手の平を下に伏せて指先で地面に触れる触地印ともいう。 2) 伝説によると、修行中の釈迦が悪魔の妨害を受けた時に、指先で地面に 触れると大地の神が出現し悪魔を退けたという。 3) このため触地印は、誘惑や障害に負けずに真理を求める強い心を象徴する。 4) 作例:東大寺試みの大仏、東寺阿シュク如来、大楽寺弥勒如来 |
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阿弥陀の印相 | (1)阿弥陀定印 (2)説法印 (3)来迎印 (4)九品印 | ||||
(1) 阿弥陀定印 | 1) 両手をへその前で掌を上に向け右手を上に重ね,人差し指を背合わせにし, 親指をその指先に添えて輪を作る。 2) 作例:平等院阿弥陀如来、鎌倉大仏などの定朝様の阿弥陀仏坐像 に多くみられる。 3) 九品印では上品を示す。 |
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(2) 説法印 | 1) 釈迦如来では転法輪印のこと。両手を胸の高さまで上げ、掌を前に向けて 親指と人差し指(または中指、薬指)で輪を作る。 2) 九品印では中品を示す。 2) 作例:広隆寺阿弥陀如来、興福院阿弥陀三尊、法隆寺伝法堂の阿弥陀如来 願成就院阿弥陀如来。比較的珍しい印相。 |
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(3) 来迎印 | 1) 右手は胸の前に上げて、左手は下げてともに掌を前に向け、それぞれの手の 親指と人差し指(または中指、薬指)で輪を作る。 2) 信者の臨終に際して、阿弥陀如来が西方極楽浄土から迎えに来る時の印相 である。 3) 九品印では下品を示す。 3) 作例:三千院阿弥陀如来など。 4) 浄土宗、浄土真宗の本尊像は基本的に、この印相である。 |
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(4) 九品印 | 1) 手の位置で3分類 @上品(定印):両手をへその前で両手を組む 。 A中品(説法印) :両手を胸の前に上げ掌を前に向ける。 B下品(来迎印) :右手を胸の前に左手を下げ掌を前に向ける。 2) 親指と他指との組み合わせで3分類 @上生:親指と人差指をあわせて輪を作る。 A中生:親指と中指をあわせて輪を作る。 B下生:親指と薬指をあわせて輪を作る。 3) 阿弥陀如来の九品印を信仰の程度による九品往生と関連づけることは 江戸時代の俗説とも言われている。江戸時代以前の仏像に九品印を単純 に当てはめると仏像を見誤る恐れがある。 4) 作例: |
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その他の印相 | (1)思惟手 (2)合掌印 (3)智拳印 (4)刀印 (5)馬口印 6) 降三世印 (7)跋折羅印 (8) 檀荼印 (9) 梵篋印 | ||||
(1) 思惟手 | 1) 右手の人差し指と中指と薬指を軽く頬にあてるか、右手を頬に添えたりする。 2) 人々を救う方法を考えている姿と言われる。、 3) 作例:広隆寺弥勒菩薩、観心寺如意輪観音に見られる。 |
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(2) 合掌印 | 1) 古来からインドでは、敬意を込めた挨拶の一種。仏教に取り入れられ、 仏をお参りするときの作法となる。 2) 密教では、右手を仏の世界、左手を衆生の世界とする。又、五本の指には 小指から地・水・火・風・空の五元素を割り当てる。 3) 作例:不空羂索観音(東大寺、興福寺、広隆寺等)、 千手観音(興福寺、 広隆寺、唐招提寺、三十三間堂、葛井寺、道成寺本尊、法性寺等)、 普賢菩薩、勢至菩薩、善財童子(西大寺、安倍文殊院)など。 |
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(3) 智拳印 (ちけんいん) |
1) 左手は人差し指を伸ばし、中指、薬指、小指は親指を握る。右手は左手の 人差し指を握る。 2) 右親指の先と左人指し指の先を合わせ、右の人差し指は親指に添える。 3) 作例:金剛界大日如来(東寺講堂、金剛峰寺、臼杵磨崖仏、円成寺、 金剛寺、 横蔵寺、半蔵門ミュージアム、奈良博、東博、放光寺、霊山寺、 ボストン美術館等)、中尊寺一字金輪仏頂、多宝如来。 |
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(4) 刀印 | 1) 片手の人さし指と中指をのばしてくっつけ、残りの指を握る。指の刀で悪を 消し去るという意味が込められている。 2) 作例:一光三尊式阿弥陀如来、東博法隆寺宝物館。 |
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(5) 馬口印 | 1) 胸の前で左右の親指・中指・小指を立て、残りの指を曲げて手のひらを 合わせる。 2) 作例:馬頭観音に特有の印相。豊財院、大安寺、観世音寺、大報恩寺
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(6) 降三世印 (ごうざんぜいん) |
1) 両手の掌を外に向ける。右手の掌をは左手の甲に重ねて小指同士を絡める。 親指と人差し指は伸ばし、中指、薬指は曲げる。 2) 作例:降三世明王の中央のニ手が結ぶ印。明通寺、慈恩寺 |
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(7)跋折羅印 (ばさらいん) 大瞋印 (だいしんいん) |
1) 両手の人差し指、中指、薬指の三指を伸ばし胸の前で右腕が外側で交差 させる。 2) 作例:軍荼利明王の中央のニ手が結ぶ印。金勝寺 |
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(8) 檀荼印 (だんだいん) |
1) 胸の前で両手を組み中指をたて指先を合わせる。鞭を表して煩悩を叩いて 追いだす。 2) 水牛に乘る大威徳明王の中央のニ手が結ぶ印。石馬寺、真木大堂 牛伏寺 |
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(9) 梵篋印 (ぼんきょういん) |
1) 両手を胸元で水平にして 、一方の掌の上に他方の掌を重ね合わせて空間 を作る。その中には宝珠が入るという。 2) 作例:善光寺式阿弥陀三尊の脇侍の印相。 甲斐善光寺 、向徳寺 東京博(法隆寺宝物館)、円覚寺、東京博(いわき市) |